下痢は、大きく
- 急性下痢(14日以内)
- 遷延性下痢(その中間)
- 慢性下痢(30日を超えるもの)
に分かれます。
今回は「慢性下痢」についてお話しします。
慢性下痢の原因は大きく2つ
慢性下痢は大きく分けて、
- 大腸の粘膜に異常があるもの
- 大腸の動きに異常があるもの
に分かれます。
粘膜に異常があるかどうかは、大腸カメラをしなければわかりません。
「過敏性腸症候群」は除外診断です
長い間「過敏性腸症候群(IBS)」として治療を受けているのに、大腸カメラを受けたことがない方がおられます。
しかし本来、過敏性腸症候群は除外診断です。
つまり、
- 大腸粘膜の炎症
- 大腸がんなどの腫瘍
- 甲状腺や膵臓の病気
- 消化・吸収異常
など、下痢の原因となる病気がないことを確認して初めて診断されます。
「ストレスがかかると下痢をする体質」
= 過敏性腸症候群
ではありません。
ストレスは“炎症”も悪化させます
脳と腸は密接に関係しており、これを脳腸相関といいます。
ストレスが腸に影響することは、科学的にも証明されています。
これは「動きの問題」だけではありません。
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、
- ストレスで悪化することが多い
- 感染性腸炎をきっかけに発症することもある
- 粘膜が炎症を起こしていても、必ずしも血便が出るとは限らない
適切な治療を受けずに炎症が続くと、将来的にがんのリスクになる可能性もあります。
慢性下痢が続く場合は、一度大腸カメラを受けることをおすすめします。
見た目が正常でも病気はあります
「顕微鏡的大腸炎」という病気があります。
これは、
- 大腸カメラでは見た目は正常
- 生検(粘膜を採取して顕微鏡で調べる)で初めて診断がつく
という疾患です。
病理医に提出する際も、
「顕微鏡的大腸炎を疑っています」と明記して初めて診断に至るケースもあります。
“そういう目”で見なければ、見逃される病気があるのです。
薬が原因のこともあります
水のような下痢が続き、体重が10kg、20kgと減少してしまった患者さんがいらっしゃいました。
他院で大腸カメラは異常なし。
様々な薬を使っても改善しませんでした。
お薬手帳を拝見すると、薬剤性腸炎が疑われました。
原因と考えられる薬を中止し、再度大腸カメラを行いました。
大腸粘膜に異常はありませんでしたが、小腸粘膜に萎縮があり、薬剤性小腸炎として矛盾のない所見でした。
特別な薬は追加せず、徐々に改善。
体重も元に戻りました。
その薬は、数年間服用していたものでした。
副作用は、飲み始めてすぐに起こるとは限りません。
「次の一手」を考える内視鏡
私が駒込病院で教わった言葉があります。
「がんを診断できるということは、がんでないものもきちんと診断できること」
「次の一手を考えながら内視鏡を行うこと」
所見があれば診断できるのは当然です。
問題は、
所見がなかったときに何を考えるか。
診断をつけることがゴールではありません。
患者さんの「困り」を減らすことがゴールです。
慢性下痢を「体質」で片付けず、
一緒に原因を探していきましょう。
