健診などで貧血を指摘されたことはありませんか?
貧血というとフラフラしたり息切れしたりというイメージがあると思いますが、
症状のない貧血も要注意です。
今回は、赤血球の働きと貧血について解説します。
◼️赤血球と貧血
赤血球は、肺から取り込んだ酸素を体の隅々の細胞まで届ける働きをしています。
貧血とは、血液の中にある赤血球の数が少なくなることです。
◼️貧血はどんな症状がでるの?
貧血(=赤血球が少ない)になると、体に酸素が行き渡らなくなります。
急に起きた貧血では、怠くなったり疲れやすくなったり、脳に酸素が行き渡らずにめまいやふらつきをおこしたりします。
体は酸素を欲しているので、
肺には「もっと酸素を取り込むように!」と、
心臓には「もっと血液をたくさん送るように!」
と命令するため、呼吸や脈が頻回になり、息切れや動悸が起こります。
しかし、ここで気をつけたいのは、慢性的に続く貧血では、症状が出にくいということです。
貧血が徐々に起きていくと、じわじわと低酸素の状態が続いている、いわば高山トレーニングをしているようなもので、少しずつ体が慣れてしまい、症状が出にくくなってしまうのです。
大腸癌から滲む程度の少量の出血が続いている場合、例え元々の赤血球の数が半分に減っていたとしても、頻脈もなくケロリとしていることもあります。
人間の体はそう簡単に調子を崩さないように調節する機能が備わっているため、症状が出た時には大変なことになっていたということもしばしばあるのです。
◼️貧血の原因
貧血になるのは、
①赤血球の需要が増える時
成長期や妊娠などで血液量が増え、多くの赤血球を作らなければならない時は、相対的に赤血球が足りなくなるため、貧血になります。
②赤血球が体の外に出てしまう時
つまり、出血です。
閉経前の女性では、月経による貧血の頻度が多いですが、
男性や閉経後の女性では、消化管出血による貧血に注意が必要です。
③赤血球が作れない時
・赤血球の工場である骨髄に問題がある時。白血病や多発性骨髄腫などがこれにあたりますが、赤血球だけでなく、白血球や血小板も同時に低くなることが多いです。
・腎臓が悪くなると、赤血球を作るためのホルモンが出なくなり、赤血球を作れなくなります。
・体の中に炎症があると、様々な物質の反応により、「体の中に鉄はあるのに、赤血球を作ることができない」という状態に陥ります。
特に、関節リウマチなどの膠原病や悪性腫瘍により慢性的に炎症がある場合に起こります。
・鉄がたりない時
赤血球を作るのに不可欠なのが鉄ですが、ピロリ菌の感染などにより胃の粘膜が高度に萎縮(薄くなること)してしまうと鉄の吸収の効率が悪くなることがあります。
また、薬の副作用で鉄が吸収されにくくなることもあります。
ただし、食事から吸収される鉄分は1-2%で、ほとんどが体の中にある鉄の再利用なので、他の要因がなければ、貧血をきたすまでには時間がかかります。
極端な偏食でも鉄不足になることもありますが、成人ではまれです。
・ビタミンが足りない時
ビタミンB12と葉酸は赤血球を作る時に必要です。偏った食生活、過度のアルコール摂取、薬剤による影響や萎縮性胃炎などが原因となりこれらの欠乏症になると貧血をきたします。
⑤赤血球がたくさん壊されてしまう時
せっかく赤血球をつくっても、寿命を全うせずに赤血球が壊れてしまう場合です。
・壊れやすい(できそこないの)赤血球が作られてしまう時
・正常な赤血球を壊す物質(抗体)が体の中で作られてしまう時
・脾臓の機能が亢進してしまう時
脾臓は古くなった赤血球、血小板などを壊す臓器です。脾臓が腫れている場合は多くの血液が脾臓に入っており、赤血球が多く壊されている可能性があります。
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一口に貧血と言っても、色々な原因があります。
症状がない貧血は、ゆっくりと進行した貧血、つまり慢性的な貧血の可能性があります。
貧血の種類は追加の血液検査で見極められることが多いですが、
消化管出血の原因は、胃カメラや大腸カメラをしてみないとわかりません。
追加の血液検査で消化管出血の可能性が否定できない場合には、きちんと検査を受け、癌などの病気がないか確認することが大切です。