便秘について(原因編)

今回は、便秘についてです。

便秘の辛さをとることは大切ですが、便秘の背景に病気が隠れていることもあります。

今回は、便秘を引き起こす原因について解説します。

 

◼️食べてから便がでるまで

食べたものは、食道、胃、小腸(十二指腸・空腸・回腸)を通って消化・吸収され、最後の残りかすが水様の状態で大腸へ到達します。大腸は残った水分を時間をかけて吸収し、便をサラサラの状態からドロドロに、さらに形のある状態へと徐々に変化させます。固形となった便は、一旦直腸に溜められます。直腸のセンサーが脳に働きかけ、便意として認識されます。脳からの指令を受けて肛門の筋肉が開き、これと同時に腹圧をかけることで便が直腸から押し出され、排出されます。

 

◼️便が出ない(出にくい)原因

便が出ない(出にくい)原因として、

①便のかさが減っている

②大腸の動きが悪い

③便の通り道が狭い

④肛門の反射がうまくいかない

ということが考えられます。

 

①便のかさが減っている

便のもとは、食べ物です。食事の量が少なくなると、便のかさが減り、出る便の量は少なくなります。

高齢の方は食が細くなりやすいため、若い頃よりも便が出る頻度が少なくなることが多いです。ただし、頻度が減っても、お腹の張り感や残便感などの不快感がなければ「便秘」ではありません。

しかし、食が細くなった原因として、消化器疾患やうつ病、認知症など、病気が隠れていないか確認することは大切です。

 

②大腸の動きが悪い

お腹の動きが悪くなって、便を運ぶ力が弱くなると便秘になります。

大腸の動きには様々な要因が関わっており、自律神経やホルモン(消化管ホルモン、甲状腺ホルモン、女性ホルモンなど)、肝臓で作られる消化酵素の代謝、腸内細菌のバランスなど、大腸の動きに影響を及ぼすものは多々あります。

糖尿病、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などの病気により大腸の動きが低下すると便秘になります。

膵炎や腹膜炎など、お腹の中に炎症がある時にもお腹の動きが止まってしまい便秘になることがあります。

腰痛で出された鎮痛薬や、市販の風邪薬、精神科や心療内科で出される薬の中にも便秘の副作用が出るものもあり、薬剤性便秘も忘れてはいけない原因のひとつです。

 

③便の通り道が狭い

大腸は1本道ですので、通り道を塞ぐものがあれば、便は出られなくなります。

例えば、大きな大腸癌で道が塞がれてしまうと、便秘になったり、便が溜まっているのに水様のものしか出ない(通り抜けられない)、ということになります。

ただし、大腸の径は3〜5cm程度あり、ある程度狭くなっても伸びることができるので、単独で便秘の原因になるほどの病気となると、腸の壁をぐるっと全周おおうような大きな大腸癌や、狭窄をおこすほどのひどい炎症があることが推測されます。

時々、胃の検査で使ったバリウムが腸で固まってしまい、通り道を塞いで便秘(腸閉塞)を起こすというケースもあります。

 

④肛門の反射がうまくいかない

はじめに説明したように、便を出すには、「肛門を開くと同時に腹圧をかける」ということが必要です。

便がちゃんと運ばれて直腸まで来ていても、肛門がうまく開かないと便秘になります。

脳や脊髄の病気、脊柱管狭窄症などによって、肛門近くの神経や筋肉が適切に働かないと、便をうまく出せなくなってしまいます。(これらの病気では、便失禁をきたすこともあります。)

また、腹筋が弱って腹圧を十分にかけられないことも便秘の原因となります。

骨盤底筋協調運動障害というものもあります。「肛門を開く」のと「腹圧をかける」ということを同時に行う、コンビネーションがうまくいかないというものです。

 

 

便秘と一口に言っても、その原因は多岐にわたり、特に高齢になるほど色々な原因が組み合わさって便秘を引き起こしていることも多いため、単純ではありません。

40歳以上では大腸がんの頻度も増えます。

1週間便秘があって治ったというのであれば過度な心配をすることはありませんが、いつもと違うと感じたら、ただの便秘と自己判断せずにかかりつけ医師に相談してみましょう。