逆流性食道炎について

食後に胃が重たい感じがする、朝起きた時に胃がむかむかする、口の中が酸っぱいなどの症状 はありませんか?

逆流性食道炎という病気。皆さん一度は聞いたことがあると思います。 今回は、食道・胃の働きと逆流性食道炎について解説します。

(何に気をつければ良いのかだけ知りたい!という方は、ページ下部のまとめだけでも読んで下さいね。)

◼️食道と胃のはたらき

 食道は、口と胃をつなぐ管状の臓器で、食べ物・飲み物や唾液を胃へ運ぶように、下へ下へと送 る動きをしています。そしてそれらを胃へ送ったあとは、胃と食道の境目にあるリング状の筋 肉がキュッとしまって、胃の中のものが食道へ逆流しない仕組みになっています。このリング状の筋肉は、食べ物や胃の状態によって締まり具合が変化します。 例えば、胃の中の圧力が高まると、筋肉が緩みます。そのため、飲み込んだ空気はげっぷとして出すことができます。

 

 胃は、食道と十二指腸を繋ぐ臓器で、広く膨らんだような形をしています。 食べたものを細かく砕いたり、消化酵素と混ぜ合わせ、一定の時間食べ物を溜める働きをしています。そして少しずつ小腸(十二指腸)に送ることで、ゆっくり消化吸収するためのアシストをしています。

◼️逆流性食道炎とは?

 胃と食道の境目の筋肉がゆるむと、胃の中の酸が食道に逆流しやすくなります。 胃は食べたものを消化するために酸を作っています。胃は酸に強い粘膜で覆われていますが、食道はそうではありません。 胃で作られる塩酸という強い酸に繰り返し晒されると、食道は炎症を起こし、むくんだりただれたりします。これが逆流性食道炎(GERD)です。

 

◼️逆流性食道炎の原因は?

 食道と胃の境目のリング状の筋肉は、自分の意識で動かせない筋肉なので、鍛えられません。年齢とともに段々と緩くなっていきます。食道裂孔ヘルニアといって、胃の一部が食道側に飛び出してしまっている人は、逆流性食道炎が起きやすいと言えます。また、胃酸の分泌が高い、胃の動きが悪い、腹圧が高いなどの状態も逆流性食道炎のリスクです。ストレスや疲れなどで食道の粘膜が過敏になると、少しの逆流でも症状が出ることがあります。

 

◼️逆流性食道炎はどんな症状が出るの?

 逆流性食道炎の症状として、以下のものが挙げられます。

・胸が焼ける感じ(胸焼け)

・胃のもたれ感

・から咳(痰を伴わない咳)

・口の中が酸っぱい、苦い

・喉の違和感

・声がかすれる

これらの症状は、食後や横になった時、朝起きた時などに感じることが多いです。

 

◼️逆流性食道炎はどうやって診断するの?

 基本的には、胃カメラ検査による診断です。

 問診から逆流性食道炎が強く疑われる場合には、胃カメラを待たずに処方をする事もありますが、胃カメラ(やバリウム検査)をしないと、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、食道癌などがないかどうかはわかりません。

 胃潰瘍は食後の胃の痛みや不快感、十二指腸潰瘍は空腹時の胃や背中の痛みや不快感を起 こすのが典型的な症状ですが、問診だけでは逆流性食道炎と見分けがつきづらいこともあります。

 逆流性食道炎でよく処方される(酸を抑える)薬は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍にも効いてしまいます。逆流性食道炎として薬を長く飲んでいた方に胃癌が見つかり、「逆流性食道炎を疑った時に一度 でも胃カメラをしておいてほしかった…」と残念な気持ちになったことも何度か経験しています。

 「逆流性食道炎で薬をずっと飲んでいるけれど、胃カメラを飲んだことがない」という方は、胃カメラ検査を受けて、心配な病気がないかどうかきちんと確認しましょう。

➡︎胃カメラ検査について詳しくはこちら

 

◼️逆流性食道炎の治療は?

 症状を和らげるために、胃酸を抑える薬や、食道を保護する薬などを使います。 薬の種類によって、頓服ですぐ効くものから、効果が出るまで数日かかるものもあります。 逆流性食道炎に使われる薬は比較的安全に内服できる薬ですが、ピロリ菌除菌後に長く内服していると胃癌のリスクを高めるものもあります。

 再発を予防し、薬を必要最小限に留められるようにするには、生活習慣の改善が大切です。

 

 

 

★逆流性食道炎生活習慣チェック!★

☑️食事をしてすぐに横になっていませんか?

 胃の中にものがたくさん入っていて、境目の筋肉が緩んだ状態のままごろんと寝転んだら、 胃酸が食道へ逆流します。 胃から十二指腸に食べ物が流れきるまで、個人差はありますが、大体食後2-3時間だと言われ ています。食後2-3時間は横にならず、座った状態でいる事が望ましいです。 どうしても横になる場合でも、頭側を高くすると逆流が少なくなるでしょう。 

 

☑️右向きで寝ていませんか?

 胃の形は真っ直ぐでなく、曲がった形をしているので、上の図のように、右を下にして横になると逆流しやすくなります。

 

☑️バランスの良い食事をしていますか?

 油物や甘いもの(チョコレート、あんこなど)は胃の中で胃酸を出すホルモンを刺激したり、長く胃の中に留まる傾向があるため、控えましょう。 また、いざ逆流してきた時に刺激になる、スパイスや柑橘類も、症状があるときは控えましょう。

 

☑️体重は増えていませんか?

  体重が増えると腹圧がかかるので、胃から食道に押し出される力がかかります。体重を落として内臓脂肪を減らすことも大切な治療です。

 



◼️ まとめ

〜逆流性食道炎を予防・改善するために〜


・腹八分目を心がける

・だらだら食べをやめる

・食べてすぐ横にならない(食後2-3時間は座っている)

・体重を適正体重(BMI 22)まで減らす

・寝る時は左を下にする

・頭側を18cmほど高くなるようにして寝る(枕のみを高くするのではなく、腰から頭にかけて緩や かに坂にするのが良いです)

・ストレスを溜めないようにする

・下記※の食べ物・飲み物を控える

 

※逆流性食道炎で控えた方がよい食べ物・飲み物

・アルコール

・甘いもの

・油っこいもの

・柑橘類 ・スパイス

 

 生活習慣を変えるのは地道な努力です。 症状がつらい時には一生懸命頑張れるものですが、症状がなくなった途端にもとの生活に戻り、 再発を繰り返すこともしばしばです。

大切なのは続けることです。ハードルの高い目標ではなく、達成できそうな少しだけ高い目標を立て、できたらまた1段登る、というスモールステップで続けていけるといいですね。