下痢は、急性下痢と慢性下痢に分かれます。
急性下痢は下痢の持続期間が14日以内のもの、
慢性下痢は下痢の持続期間が30日を超えるものを言います。
(その間の期間のものは遷延性下痢といいます。)
今回は、寒い季節に流行りやすい、急性下痢症について解説します。
急性下痢症の原因は、食中毒や虚血性腸炎、薬剤性など様々な原因がありますが、ほとんどが感染性だといわれています。
感染を起こすものは、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫などがありますが、急性下痢症の原因の多くはウイルス性です。
一般的に、細菌による感染はウイルスよりも重篤になりやすい傾向があり、高熱(38℃以上)や強い腹痛、血便を伴うものは要注意です。重症が疑われる細菌性腸炎や原虫・寄生虫による腸炎の場合には、抗菌薬(=抗生物質)や抗原虫薬、抗寄生虫薬による治療を行うことがあります。
一方で、ウイルスには特効薬はありません。この場合は、対症療法で自分の体がウイルスを排除するまで待つしかありません。
対症療法といっても、できることは限られています。吐き気がある場合には吐き気止めを処方しますが、下痢については、薬で無理やり下痢を止めてしまうと、悪いものを体外に出せずに感染が長引いてしまう恐れがあります。
当院では、腸内環境を整えるための整腸剤と、症状を和らげるために漢方薬を処方しています。
対症療法で様子を見ていても全く良くならない、症状が悪くなる、新たな症状が出る、高熱(38℃以上)が出る、水分が取れないなどの場合には、他の原因について調べたり、入院が必要かの判断も必要なため、再度診察を受けましょう。
ところで、下痢で気を付けたいのが脱水です。食欲がない上に下痢で水分が出てしまうため、自分が感じている以上に体は脱水状態になっています。特にご高齢の方は、日ごろからすでに軽い脱水状態であったり、ご自身で脱水になっていることに気づかないことも多く、特に注意が必要です。
脱水になると血液が濃くドロドロになり、もともと高血圧・高脂血症・糖尿病などで血管が詰まりやすくなっている人が脱水になると、脳梗塞や心筋梗塞の引き金になってしまう危険があります。
⬛︎下痢になったら
水分はこまめにとりましょう。経口補水液(>スポーツドリンク)であれば、より効率的に水分が吸収でき、下痢で失われたミネラル分の補給もできます。
そして食欲が出てきたら少しずつ、温かくて消化の良いものをとりましょう。脂分や繊維質が多いと消化の負担になるため、軟らかく煮たうどんやおかゆなどがよいでしょう。
具体的な食事については、管理栄養士コラム🔗もご覧下さい。
水分が取れない程弱っていたり、飲んでもすぐ嘔吐してしまうなどの場合には、点滴をして体の水分を補ってあげる必要があります。重篤な場合は入院が必要となることもあります。
⬛︎感染予防のために
ウイルス性腸炎では、ノロウイルスやロタウイルスなどの感染力の強いものが多く、家族内感染の予防も重要です。
患者さんが嘔吐したものをご家族が掃除したり、便の処理をしたりする時にはマスクと手袋をして、終わった後にはよく石鹸で手洗いをしましょう。また、ノロウイルスやロタウイルスにはアルコール除菌は効果がないため、次亜塩素酸の含まれたもので拭き取るようにしましょう。
ペットボトル500ml 1本の水に、市販の塩素系漂白剤をペットボトルのキャップ1杯分を入れて混ぜると、次亜塩素酸消毒液が作れます。
嘔吐・下痢をしている方は、できるだけ家の中にウイルスを付けないようにすること、顔や手をふくタオルも分けましょう。
ドアノブやトイレの流すレバーなどにウイルスがつくことを防ぐために、患者さんは、トイレのレバーやドアノブをつかむ時、おしりを拭いた方と反対の手でつかむようにしましょう。
ウイルス感染は手洗いうがいによる予防が一番大切です。
そして、疲れやストレスを溜めすぎず、バランスの良い食事と質の良い睡眠をとって、自分の体の免疫力を落とさないように日々心がけましょう。