悪のコレステロールLDL

 LDL(いわゆる悪玉コレステロール)は、命に関わる病気を起こす、本当に悪いやつです。

 「玉」がついているので、丸くて少し可愛らしい印象になるのか、みなさんLDLを「ちょっと鬱陶しいけど憎めないやつ」くらいにしか思ってないのでは…と心配です。

 LDLが高いけど、少しだから… 去年と変わらないから… と、健診で引っかかることに慣れてしまっていませんか?

 今回は、「悪の」コレステロールLDLと動脈硬化について解説します。


◼️コレステロールについて

 そもそもコレステロール自体は、人間の体をつくっている細胞の膜や、元気ホルモンと呼ばれるステロイドホルモン、女性ホルモン・男性ホルモン、消化に関わる胆汁酸、ビタミンDなどの原料となるもので、人間の体にとって、なくてはならないものです。

 食事から取り込まれるコレステロールは20-30%で、70-80%は体の中で作られるといわれています。


◾️悪玉コレステロールと善玉コレステロール

 悪玉/善玉コレステロールというのは、コレステロールを血液や肝臓・体の細胞へと運ぶための船なようなもので、タンパク質と脂質によって作られています。 LDL(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質)というのがいわゆる悪玉コレステロールです。LDLは、肝臓で作られたコレステロールを身体中の細胞に運ぶ役割をしています。

 しかし、血管の中にLDLが多すぎると、血管の壁に入り込み、動脈硬化を起こします。

 HDL(High Density Lipoprotein:高比重リポタンパク質)は善玉コレステロールといわれ、血液中の余分なコレステロールを回収したり、LDLを減らす働きをします。


◾️LDLと動脈硬化

 動脈は、酸素や栄養を届けるために全身に張り巡らされています。

 心臓のポンプ作用で、私たちの血管の壁には絶えず圧力がかかるため、血管の壁に小さな傷が出来ては修復して…を繰り返しています。

 血管の壁に傷がつくと、この傷から血液中のLDLが壁の中に入り込みます。LDLは白血球などの細胞を呼び集めて炎症を起こし、LDLを取り込んだ細胞の死骸や脂肪、線維などが一塊となって、徐々に壁の膨らみ(=プラーク)ができていきます。

 このプラークが大きくなるほど血液の通り道を狭くして、身体中の臓器へ十分な栄養や酸素を運ぶことを妨げます。


◾️プラークについて

 「血栓」や「動脈硬化」というと、硬いイメージがあると思いますが、LDLが引き起こす動脈硬化は、粥状(じゅくじょう)動脈硬化という、お粥のような状態のものが血管の膜の下に作られるものです。そして、このプラークが柔らかいほど危ないのです。(不安定プラークといいます。)

 溶けかけの雪◯大福のように、柔らかくてぷるぷるしたものが血管の壁にできているのを想像して下さい。

 怖いのは、ふとした瞬間にこのぷるぷるのプラークの表面が削れて中身が出てしまったり、一部がちぎれて血流に乗って流れていく時です。

 プラークの表面が削れると、それを修復しようと血小板などが集まってきて、狭くなっている血管を詰まらせます。

 また、プラークの一部がちぎれたものは、血液中の血小板などをくっつけ、塊になって血管の中を流れていきます。そして下流のより細い血管を通り抜けられず、血管を詰まらせます。

 血管が詰まると、酸素や栄養が行き渡らなくなり、その先にある細胞が死んでしまいます。これが心臓の動脈に起これば心筋梗塞、脳の動脈に起きれば脳梗塞です。

 動脈硬化自体に症状はありませんが、じわじわと血管を弱らせています。

 そして突然命に関わる病気を起こしうる、というのが動脈硬化の怖いところです。

◼️コレステロールと食事

 卵など動物性食品に多く含まれるコレステロールですが、コレステロールが食事からどのくらい吸収されるかは個人差が大きいです。

 例えば、卵をたくさん食べたからと言って必ず体の中のLDLが増えていくかというと、そうでもありません。

 同じ食事をしていても、コレステロールが上がりやすい人とそうでない人がいます。

 前述したように、体の中のコレステロールは70-80%は体の中で作られています。LDLが高い人は、コレステロールの多すぎる食事は控えるべきです。しかし、食事のコレステロールだけを制限しても、カロリーの高い食事やバランスの悪い食事を続けていれば、結局体の中でLDLが作られてしまいます。

 体の中でコレステロールが作られにくい食事をするという方が大切です。


◾️LDLを減らす食事

 体の中のLDLを減らすには、野菜をできるだけたくさん取り、糖質・タンパク質・脂質のバランスの良い基本的な食事をした上で、

乳製品や肉類などの動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸を減らして、

魚やナッツ類に含まれる不飽和脂肪酸をよく摂ると言うのが大切です。(脂質の摂りすぎには注意です!)

 そしてHDL(善玉コレステロール)を増やすために、適度な運動を取り入れましょう。

 具体的な食べ物や調理法については、当院の管理栄養士にバトンタッチです。

 個別に栄養指導を受けて頂くのが良いと思いますが、今後ブログに記事を書いてもらおうと思っておりますので…乞うご期待!


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 異常値が変わらないということは、「異常な状態がずっと続いている」ということです。

 LDLが血管内にどんどん溜め込まれているということです。

 症状(脳梗塞や心筋梗塞)が起きてからでは遅いです。(もちろん、起きてしまったらその後の再発予防も大切です!)


 生活指導・栄養指導を受けて、自分の目標を知り、少しずつ生活習慣を改めましょう。

 それでも数値が改善しない時には、放置せずに薬できちんとコントロールをしましょう。

 そして、危険なプラークができていないか、エコーで定期的にチェックをしましょう。