ピロリ菌について、知っていますか?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、一部の悪性リンパ腫、特発性血小板減少症の原因となる菌です。
全世界の約半分の人がピロリ菌に感染していると言われています。特に東アジアでは、後述する発癌物質を出すタイプのピロリ菌が多く、胃癌による死亡を減らすために、積極的な除菌治療が行われています。
◆ピロリ菌はどこから感染するの?
ピロリ菌は、免疫がまだ完成されていない5-6歳までの間に感染します。
土壌の中に住んでいる菌であることから、井戸水を飲んでいる人は感染しやすいと思われていた時代もありますが、水道の整備が行き届いた現代の日本では、ヒト-ヒト感染がほとんどです。
ピロリ菌は胃のみで生存するため、ピロリ菌を持っている人から、幼児までの間に何らかの形で(口移しなど)感染すると考えられ、具体的な経路としては、母子感染が多いといわれています。
つまり、お母様やごきょうだいがピロリ菌陽性ないし胃癌にかかったことがあるという方は特に、一度ピロリ菌のチェックをすることをおすすめします。
ピロリ菌は一度除菌すれば、再度感染する確率はかなり低いと言われています。
また、大人になってからの感染もまれなため、内視鏡検査(+必要に応じて追加の検査)でピロリ菌がいないと診断された場合には、今後ピロリ菌に感染する心配はほとんどないと言えます。
◆ピロリ菌はどんな悪さをするの?
ピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌の原因となります。また、血小板減少症の原因となったり、悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)を引き起こしたりします。
ピロリ菌が一度感染すると、生涯に渡って胃に住みつき、炎症を起こし続けます。これが慢性胃炎です。慢性的な炎症はそれ自体で癌のリスクになります。
(メカニズムについてはこの記事では割愛しますが、慢性肝炎→肝臓癌、慢性膵炎→膵癌、潰瘍性大腸炎→大腸癌など。)
そしてピロリ菌がやっかいなのは、慢性炎症による発癌に加えて、直接発癌物質を出すというところです。
ピロリ菌が分泌する「CagA」という発癌タンパク質が胃の細胞に入り込み、遺伝子に傷をつけ、胃癌になりやすくします。
この発癌物質をつくらないタイプのピロリ菌もいますが、日本のピロリ菌は殆どがCagA陽性ピロリ菌だといわれています。
◆ピロリ菌陽性と言われたら…
ピロリ菌に感染した胃は、慢性的な炎症と長年の発癌物質への曝露によって、胃癌になるリスクが高まります。
もしピロリ菌が陽性と言われたら、
①ピロリ菌を除菌する
ピロリ菌を除菌することによって、胃癌になるリスクを30-40%減らせることがわかっています。しかし、ピロリ菌に感染したことのない人と同等まではリスクは減らせません。
②定期的な胃カメラ検診を受ける。
残念ながら胃癌リスクはゼロにはならないので、胃癌を早期発見・早期治療するために、定期的な胃カメラ検査を受けることをおすすめします。
胃の状態によって検査の間隔は人それぞれなので、かかりつけの医師に確認して頂きたいですが、1年に1回胃カメラを受けておくと安心でしょう。
バリウム検査ではダメなの?と思う方がおられるかもしれませんが、
胃カメラとバリウムでは、早期癌の発見率が違います。また、胃カメラでは、悪いものを疑った時に組織検査(病理検査=生検)ができるということもメリットです。
③きょうだいに胃カメラ(ピロリ菌の検査)をすすめる。
母子感染が多いと言われているため、同じ母親から生まれたきょうだいはピロリ菌感染のリスクがあると言えます。
今回は、ピロリ菌と胃癌のことついて解説しました。
内視鏡のファイバーが細くなったり、鼻からのカメラの性能が上がったり、鎮静剤を使って行えたりと、少しずつ患者さんに楽に受けられるようにと進化はしていますが、胃カメラはまだまだ楽な検査とは言えないですね。
しかし、定期的なメンテナンスは必要です。
これまでに一度も胃カメラを受けたことがないという方、胃カメラがご無沙汰になってしまっている方、ぜひ受けてくださいね。